全国各クラブの活動報告

日本産業人クラブ連合会視察団、インド進出の可能性探る

 「今やタタ・モーターズの超低価格車『ナノ』を、どの会社も購入して調査している」。タタ子会社のタタオートコンプシステムズのアルビンド・ゴエル社長はこう強調した。日本産業人クラブ連合会・日刊工業新聞社共催のインド視察の一コマ。視察団はタタグループのイノベーションに耳を傾けた。

 インド視察は4月15日から19日に実施。川瀬泰人団長(日本リファイン社長)のもと、視察団14人が首都デリーと近郊の自動車・部品メーカーを訪問した。地場や日系企業の首脳らからビジネス環境などについての生の声を聞き、進出の可能性などを探った。

【タタを訪問】
 初日に成田空港で結団式を開き、東京、群馬、栃木、新潟、広島など日本各地から参加した会員らが顔を合わせた。川瀬団長は「製造業は国内だけで成長することはできない。インドのような地域に出ていかなければならない」と実のある視察にするよう呼びかけた。
デリー着後、16日午前は宿泊先の「JPパサントコンチネンタルホテル」でタタオートコンプのゴエル社長と日本貿易振興機構(JETRO)ニューデリー事務所の西澤知史氏の講演を聞いた。「インドはエコカーに力を入れるのか」、「車両へのアルミニウムの使用は増えるのか」。タタグループの大物であるゴエル社長に対して活発に質問。ゴエル社長が一つひとつ丁寧に応対していたのが印象的だった。
一方、JETROの西澤氏は日本企業の対印投資動向を説明。その上で「投資環境はやさしくないし、進出企業の大半が大企業だ。だが中小企業も拠点を増やさないと将来につながらない」と強調した。
16日午後はデリー近郊のホンダの四輪車工場を見学した。人件費の安いインドでは、生産ラインで、ロボットよりも手作業に頼っている工程が多い。これを目の当たりにし、会員は手作業のメリットなどについて熱心に聞き入っていた。
川瀬団長はホンダカーズインディアの金山裕則社長に、現地での人材育成や工場の廃棄物処理などについて踏み込んで質問していた。これに対し、金山社長は「もうインド進出を考えているのですか」と逆質問。川瀬団長が「あとは時期だけです」と応じる一幕もあった。

【43社が入居】
17日は終日、タージマハールを観光。18日午前はラジャスタン州の日本企業専用のニムラナ工業団地を訪問した。同工業団地には43社が敷地いっぱいに入居している。ただ生産を開始しているのは20社で、建設中や更地が多いのが実情だった。
同工業団地では日系車部品メーカーのミクニと大同工業の工場を見学。両社とも部品受注が伸びており、工場の増強を計画している。工場内も活気に満ちていた。ミクニはグローバル工場で導入を推し進めている改善プログラムを、17日にキックオフしたばかりのタイミングで、現地従業員の改善教育などの説明を受けた。また大同工業では中西洋一マネージングディレクターから「ニムラナはインド人も田舎のイメージで人が集まらず、グルガオンで集めている」などと人材採用の実情を聞いた。

【日系専用タワー】
18日午後はハリヤナ州マネサールのワールドトレードセンターマネサールで、印ディベロッパーとコンサルティング会社、日刊工業新聞社の覚書(MOU)の式典に参加した。10月稼働予定の日本企業専用のタワー棟を視察し、入居企業が受けられる市場調査や税制調査などの包括的なサービスについて説明を受けた。
最終日の19日は午前に地場部品メーカーのカリファフォージを訪問。午後はデリー空港で解団式を開いた。日刊工業新聞社の井水治博社長は視察に全面協力してくれたサン・アンド・サンズ・グループの中島耕一郎氏らに感謝の意を表明。川瀬団長が「見込み通りの実のある視察になった」と笑顔で締めくくった。


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